2024.09.02

COLUMN

うさぎをお迎えするときに

ウサギは犬や猫と違ってワクチンがないため、お迎えしてすぐに動物病院でやらなきゃならないことはほぼないです。
ただ、インターネットなどでウサギについての不正確な情報もあり、適切な飼い方ができていない方も見かけます。
あまり鳴かないので飼いやすいと思われがちですが、ウサギを飼うのは犬や猫に比べ大変ですので、良く調べてから飼うことを決めてください。

目次

お迎え前に準備するもの
ケージ
床材
食器
飲水ボトル
お迎え後の食生活
牧草
ペレット

おやつなど
その他(盲腸便)
運動習慣
部屋んぽの準備
健康とコミュニケーション

 

お迎え前に準備するもの

ケージ

ウサギが伸びたり立ち上がったりしてもぶつからないように、大きめのケージを選びましょう。
ケージ内に飲水ボトル、牧草用のフィーダー、トイレ、食器を入れても大人のウサギが横になってくつろげるサイズです。
側面は金属製の丈夫なもので。
木製やプラスチック製のものは、かじって壊されてしまいます。
ケージから出たくて金網をかじり不整咬合に至るケースもありますが、ケージから出して運動する時間を確保することで軽減できる問題だと思います。
ケージを清潔に保つために掃除のしやすさも重要です。
特に底面が取り外しができて、丸洗いできるものが楽ですね。

床材

これは私自身、最適なものがまだわかりません。
もっともよいのは牧草などを厚く敷きつめて、床の硬さがでないようにした状態でしょう。
しかし、清潔さは保ちにくいです。
多湿だとカビの温床になり、乾燥していると牧草の破片がホコリとなってしまいます。
ケージ内だけであれば可能ですが、2-3日おきに全とっかえする必要があり、費用がそこそこかかってしまいます。
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手入れのしやすさからか、すのこや金網を勧める人もいますが、足裏に負荷がかかり足底皮膚炎(ソアホック)の原因になりやすいためお勧めできません。
足底皮膚炎(ソアホック)の予防として最も効果的であろう物は、厚手で毛足の長いバスマットです。←もこもこバスマットみたいな名称で市販されていると思います。
足に当たる面が平らにはならないため、血流が阻害されにくく、生地も柔らかいためソアホックになりにくいです。
ただし、ほぼ100%の確率でいたずらして、出ている毛足を引っこ抜いてしまう……悩ましいところです。
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ただ、すのこのケージで飼われていても足底の状態が良い子もいます。
結局のところ
 ・適切な運動(ケージに閉じ込めたままにしない)
 ・体重管理(肥満でない)
 ・下半身の清潔さ(尿や便などで汚れていない)
というのが重要なのかもしれません。

食器類

牧草を入れる専用のフィーダーが売られています。
牧草を直接床においてもよいのでしょうが、ケージ床に牧草が散らばり清掃が大変です。
(フィーダーに入れていても遊んで散らかすかもしれませんが)
ペレットを入れる器は何でもよいですが、ひっくり返してしまうことがあるので少し重めのものが良いでしょう。
ネジでケージに固定できるものであれば、ひっくり返される心配はないです。

飲水ボトル

飲用水に関しては器を置くタイプのものでも、ケージの壁に取り付けておくものでもよいですが、ウサギ自身の身体が濡れないようにしなければなりません。
ケージに取り付けるタイプのものであれば水漏れに、器であればひっくり返してしまわないように注意が必要です。

お迎え後の食生活

準備がおわり無事にウサギをお迎えしたあとは、当然ですが毎日の食事が必要です。
ウサギの食事として用意する必要のあるものは、ペレット・牧草・水です。
そのほかに必要なものは、にんじん…ではありません。
野菜=食物繊維と考える方もいますが、野菜をメインで与えてしまうとウサギに必要な食物繊維には圧倒的に足りません。
基本は牧草とペレット、野菜は時々のおやつ扱いで考えるべきと思います。

牧草について

ウサギは完全草食動物で、牧草(食物繊維)の摂取は必要かつ最重要なものです。
牧草をたくさん食べることで
 ・正常な腸内細菌そうを維持し、病原性細菌を抑制する
 ・消化管運動を促進し、食欲を増進させる
 ・咀嚼が増えることにより、歯の摩耗が起こり歯牙疾患の予防につながる
のような効果があるので、制限することなく与えてしまって良いです。※ただしイネ科に限る.
牧草の種類
牧草は大きく分けてイネ科とマメ科があり、ウサギには主にイネ科の牧草を与えます。
イネ科牧草の代表はチモシー。
刈り取った順に1番刈り(春~初夏に収穫)、2番刈り(夏~秋に収穫)、3番刈り(冬に収穫)となっています。
1,2,3番の順に栄養価が下がり、柔らかくなるため、1番刈りを与えるのが良いです。
高齢の子で嚙む力が弱くなり柔らかい牧草しか食べないような場合には、2番や3番刈りの牧草を与えることもありますが、基本は1番刈りを食べることが推奨されます。
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他のイネ科の牧草にオーツヘイやイタリアングラス、オーチャードグラス、バミューダグラスなどがあります。
オーツヘイやイタリアングラスなどは比較的甘味があるとされるので、チモシーと混ぜて与えると食いつきが良くなるかもしれません。
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マメ科の牧草はアルファルファやクローバーなどがあり、ウサギも好む傾向にありますが、タンパク質とカルシウムを多く含んでいるため、肥満や尿石症の原因になりやすいです。
成長期や妊娠期のウサギなどにはマメ科牧草が良いとされているのですが、そうでない場合は基本的にはおすすめしません。
マメ科牧草は与えすぎないように注意してください。

ペレットについて

犬や猫のようにペレットのみ与えたり、ペレットの給餌量が多い方をたくさん見かけます。
しかし、ペレットを与えすぎると食物繊維が足りなくなり、胃腸運動の低下を招きます。
牧草をかじらないので歯も伸びやすくなり、口腔のトラブルも増えます。
もちろん肥満にもなりますので意識して制限したほうが良いです。
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ペレットの基準量は、大人のウサギで体重の1~1.5%を1日量の目安として与えます。
(1.5㎏のウサギであれば、15g~22.5g)
成長期は体重の2.5%を目安とします。
成長期は小型の品種だと4~5カ月齢くらいまで、中型の品種でも5~8カ月齢くらいまでです。

水について

ウサギは水を多く飲む動物です。
昔はウサギに水は必要ないなどといわれたこともあるそうですが、間違っています。
必要水分量は資料によって差があり、1日に体重1kgあたり50~150mlの水分が必要と書かれています。
ただ、私としては少なくとも体重1kgあたり100ml以上は用意しておいたほうが良いと思います。
犬や猫に比べると1.5~2倍ほど必要であるため、常に新鮮な水を常に用意するようにしましょう。

おやつなど

野菜のほかに、ドライフルーツや生のくだものもおやつです。
フルーツは好んで食べますが糖分が多く太りやすいため、毎日は与えないようにして、コミニュケーションツールとして使いましょう。
タンポポやハコベ、オオバコ、ヒメジョオン、エノコログサ、イチゴなど野草の葉を与えることもできます。
あちこちに生えていますが、衛生管理ができていないこと、除草剤などが使用されている可能性もあることから、自宅の庭先などで管理されているものを与えましょう。
食欲を刺激してくれますが、たくさん与えると下痢などの消化器症状が出ることもあります。
こちらもおやつ程度に、少量にとどめるほうが良いでしょう。

その他(盲腸便)

ペレット・牧草・水の3点セットのほかに、ウサギには欠かせない食べ物があります。
盲腸便という通常の便より柔らかくブドウの房状で光沢のある便です。
朝方に自分の肛門に直接口をつけて食べることが多いので、見たことがない人もいるかもしれません。
便を食べるなんて…と思う方もいますが、盲腸便はタンパク質やビタミンを多く含み、ウサギの健康維持のために無くてはならないものなのです。
盲腸便を食べ損ねると、必要なビタミンが不足したり、踏んでしまって汚したりします。
肥満になると肛門に口が届きにくくなり盲腸便が食べられなくなるので、太りすぎには注意が必要です。

運動習慣

一般的に犬のようにリードをつけてウサギを散歩させることはないので、ウサギに運動は必要ないと思う方もいるようです。
しかし、肥満防止のためにも、胃腸の運動を促進するためにも、足底皮膚炎(ソアホック)の予防のためにも、毎日の適切な運動は必要です。
そのために室内での運動空間と運動時間を確保してあげましょう。.

部屋んぽの準備

前提としてウサギは非常にいたずらが好きです。
紐やコードがあれば一瞬で噛みちぎり、家具の角や足はかじってしまい、壁紙もベリベリ剥がしてしまいます。
床にマットを敷けば端からかじり、タオル地のものは繊維を引っ張り食べてしまう…。
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こんなにもいたずらをする子たちを1日2,3回、計数時間ほど遊ばせておけというのですから、我ながら正気か?と思います。
それでもなるべく室内を運動する機会を作ってほしいです。
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最近ではウサギやハムスターなどの小動物を室内で運動させることを、部屋んぽ(お部屋でのお散歩)というそうです。
さすがに部屋んぽのためにお部屋全てを開放して、とは言いませんが、一区画または一室をウサギが安全に運動できるように準備してあげてほしいです。
電源ケーブルをかじって感電したり、家具などに飛び乗って落下など危険なことが起こらないよう、スペース作りには注意を払ってあげてください。

健康とコミュニケーション

やはり運動する習慣がある子は足底の状態は良いですし、牧草もよく食べてくれるように感じます。
なによりケージの中だけではなく興味のおもむくまま室内を歩き回れるほうが、ウサギにとっては幸せではないでしょうか。
もちろん、それを見ている飼い主様も幸せになるでしょう。
病院に来た時に、その子のいたずら武勇伝や飼い主様の防止策との攻防などもぜひお聞かせ願いたいです。

おわりに

最近は色々な情報が手に入るため、ウサギの健康に気を付けて上手に飼われている方も多く見かけます。
時には大変なこともありますが、ウサギとの生活は楽しいものです。
飼う前にしっかり準備することで、想定外や大変なことを最小限にして、ハッピーなウサギとの生活を楽しんでください!