2023.10.19

COLUMN

犬猫の誤食によくあるもの

犬猫の誤食は多いです。気を付けていてもうっかりするとすぐ食べられてしまいます。
かくいう私も、飼い猫が焼き豚のタコ糸を食べかけているのを飲み込む寸前に阻止した経験がありますし、いつの間にか便に異物が混じっていたりすることもありました。
同僚の飼い犬がヒト用のおやつのパンを一袋完食してたこともありましたし、魚肉ソーセージを金具とまわりのビニールごと食べた猫もいました。
動物医療に従事している我々でさえ油断するとこんな事件を起こすので、飼い主の皆さんが完全に防ぐのは難しいかもしれません。
ただ、実際に誤食を起こすと命にかかわることもあるので、なるべく注意して危険を遠ざけてあげましょう。
全てのものを網羅するのは難しいので、経験的に多いものを記しておきます。

目次

消化管閉塞・穿孔を起こすもの
・おもちゃ、ぬいぐるみの一部やついているボタンなど
・串(竹串)、画鋲
・ゴム製品(手袋・ゴムボール・避妊具など)
・ひも状異物
・食べ物の一部や包装など・乾電池
中毒を起こすもの(食べ物)
・チョコレート
・ネギ
・キシリトール
・ブドウ
中毒を起こすもの(食べ物以外)
・百合(ユリ)
・殺鼠剤
・タバコ
番外編(けっこう大丈夫)
・鶏の骨
・乾燥剤
・保冷剤

消化管閉塞・穿孔を起こすもの

消化管閉塞とは胃や腸などに異物が詰まって食べ物や便が通らなくなること、穿孔とは胃や腸などに穴があいてしまうことです。
どちらも命にかかわるため、手術が必要になる場合があります。

おもちゃ、ぬいぐるみの一部やついているボタンなど

いつも遊んでいるおもちゃをかじって壊してしまい、その一部を飲み込んで詰まってしまうことがあります。
お薬で吐かせて解決することもありますが、詰まった場所や状態によっては手術が必要になります。
残念ながら、犬猫用のおもちゃと銘打ってあっても誤食しやすいものも市販されています。
きちんと検証したうえで販売してほしいものですが、そうでないのが実情です。
おもちゃは以下のことに気を付けて与えましょう。

  • サイズが大きく簡単に飲み込めないものを使う
  • ボロボロになってきたら新品に交換する(病院に来て手術になるより絶対に安い!)
  • 部分的に噛みちぎれそうなもの、部品が取れるようなおもちゃを与えない
  • 猫じゃらしなどで遊んだ後は片づける

串(竹串など)、画鋲

焼き鳥や団子の串の盗み食いで起こります。
先の尖っている物は、吐かせて取ると胃や食道に穴が開くため、お薬で吐かせる処置は行いません。
そのため、内視鏡のある病院では内視鏡で掴んで取るのですが、細いので掴みづらく、結局開腹手術になることもあります。
噛んで串がバラバラになっていれば便で排出されることもありますが、こちらは腸に穴が開くリスクがつきまとい、慎重な経過観察が必要になります。
我が家では焼き鳥の串など絶対に盗み食いされないように、燃えるゴミの日まで冷凍庫で保管しています。

ゴム製品(手袋・ゴムボール・避妊具など)

別に美味しくもないと思うんだけど、噛みごたえがあるのか積極的に食べる子がいます。
食べてしまっても直後であればお薬で吐かせて解決することが多いです。
ゴムなのでレントゲンに写りにくく、食べたかどうかわからないときの判断が難しいです。
経過観察しつつ、ご自宅の収納やごみ箱などをよく調べていただくことになるかもしれません。

ひも状異物

ひもは先端を飲み込むとどんどんついてくるため、最終的に全部飲み込むことになります。
ところてんのように出ればよいのですが、消化管は複雑なので、いったん引っ掛かると腸がよれてアコーディオン状になり閉塞を起こします。
また、肛門からひもが出ていた場合には、絶対に引っ張らないこと!!
腸が裂けてしまうかもしれません。

食べ物の一部や包装など

果物のタネ食べちゃって腸に詰まることもあります。
桃の種が多い気がします。
甘い香りがするせいかゴミ箱から漁って食べてしまうんでしょうね。
ほかトウモロコシの芯、切ってないタクアンが丸ごと出てきたこともあります。
あとは魚肉ソーセージの周りのビニール部分であったり、お肉のラップやお菓子などの袋を齧りながら食べてしまったりと様々です。

乾電池

とっても危険!特にボタン電池は飲み込みやすく危険です。
胃や腸の中で部分的に電流が流れて胃壁や腸壁を焦がし、しまいには穴が開きます。
飲んだかどうか不明でもレントゲンで簡単に診断がつきますが、緊急性が高いので開腹手術になる可能性が高いです。
使い終わった電池は必ずセロハンテープなどで絶縁して袋に入れ、ゴミの日までしまっておきましょう。

 

中毒を起こすもの(食べ物)

チョコレート

チョコレートはよく問い合わせがあるものの一つです。
犬猫に食べさせていけないものとして有名ですが、正直、ちょっと食べたくらいなら問題がないことが多いです。
体重5kgの子なら中毒量は板チョコ1枚くらいといわれています。(ミルクチョコレートの場合)
ビターチョコレートだとカカオの含有量が多いので、体重5㎏で板チョコ半分程度が中毒量と考えて差し支えないでしょう。
ホワイトチョコレートはカカオがほぼ入っていないので、中毒を起こすより先にチョコの油脂で下痢したり吐いたりしそうですね。
なので、お菓子のチョコをひとかけら食べたくらいでは何ともないことが多いです。
そのまま様子見で良いでしょう。
大量に食べてしまったら、もちろん動物病院へ!(先に電話してください)

ネギ

ネギの中毒も有名。
玉ねぎが有名ですが、同じネギ科の長ネギやニンニク、ニラなどもだめです。
猫のほうが中毒を起こしやすいので危険です。
小さい玉ねぎなら1/8(猫)~1/2(犬5㎏)が中毒量で、ニンニクなら2~4かけらくらいだそう。
とはいっても生で食べることはほぼないので、調理済みのものを食べてしまうことが多く正確な量はわからないことが多いです。
なので、調理に使用した量から上記の中毒量を推測していくことになります。

キシリトール

犬や猫の中毒物質としては、あまり有名ではないかもしれません。
ヒト用の甘味料としていろいろなものに入っているので、お菓子などの誤食で食べてしまうことが多いです。
腸での吸収が早いので、お薬で吐かせる処置はあまり有効ではありません。
低血糖と肝障害を起こすことが多いです。

ブドウ

個体差が大きく、数粒で中毒起こしたという報告もあれば、1㎏食べても大丈夫って報告もあります。
中毒量が不明だが、急性腎不全を起こして亡くなってしまうこともあるので要注意。
生はもちろんレーズンも油断してはいけません。

 

中毒を起こすもの(食べ物以外)

百合(ユリ)

猫はやばい。
猫にとって百合は非常に強い毒性があり、植物全体に毒性があります。(花びら、葉っぱ、茎、根っこも)
花びら一枚でも致死量といわれています。

殺鼠剤

もともとネズミを殺すために開発されているので、中毒症状の重さは食べた量に比例すると考えて差し支えありません。
成分によって致死量は違うので、食べた薬剤の製品名がわかればありがたいです。

タバコ

ニコチン中毒を起こします。
ニコチンの吸収を促進するので、水や牛乳を飲ませては絶対ダメ。
基本的には吐かせるしか対処がないので、吐かせた上で色々な症状をやわらげる処置をしつつ回復を待つしかないです。
【!注意!】
時々見かけますが、缶ジュースの残りにタバコを落として火を消すのは絶対にやめてください。
ニコチンを抽出・濃縮し、動物が飲みやすい様に味付けして、吸収しやすい様にした溶液を作成しているのと同じです。
動物が飲んだら、なすすべもなく死ぬと思っていいと思う。

 

番外編(けっこう大丈夫)

鶏の骨

鶏の骨は縦割れして尖るので危険といわれたりインターネットに書かれていたりするけど、案外胃の中できちんと消化されます。
ほぼ大丈夫だと思う。私、個人の経験では100%大丈夫。
胃の中に5~7日間くらい残りますが、レントゲンでも写り方が徐々に薄くなり、最終的に確認できなくなります。
肉食動物だけあって、きっと骨は消化できるんだなあ……
ただ、これはあくまで少量を誤食した場合のケースです。
大量に誤食したり、吐いたり元気がなくなったりした場合は病院へ!
また、正しく処理していない骨を与えると食中毒を起こしたりするので、消化できるからと安易に与えるのはやめておきましょう。

乾燥剤

ほとんどのものが大丈夫。
乾燥剤の成分の多くはシリカゲルで特に毒性はありません。
ただ、乾燥剤の中には生石灰を使用しているものがあり、こちらは強アルカリ性で危険です。
生石灰は吐かせないほうが良いため、水や牛乳を飲ませてなるべく薄めて粘膜を保護しつつ様子を見ることになります。

保冷剤

ほとんどのものは大丈夫。
現在の保冷剤で、毒性のあるエチレングリコールが使用されていることは稀だそうです。
現在使用されている保冷剤の成分は高分子ポリマーによるものがほとんどで、一過性の下痢や腹部の膨満感程度で済むと思います。

 

今回のまとめ

いかがでしょうか。
病院に来る際には、なるべく多くの情報が欲しいので、食べ散らかした後のゴミや食べたものと同じものがあれば持ってきてもらえると助かります。
成分などが記載されている部分も欲しいです。
正確な情報があれば手術を回避できるかもしれませんし、中毒を過小評価しなくてすみます。
誤食はヒトが注意していれば100%防げるはずです。
しかしうっかりミスをするのが人間というもの。
なるべく注意して予防はして欲しい。
この情報が一助になれば幸いです。